名探偵ポワロ 「死者のあやまち」 あらすじと感想
海外ドラマ【名探偵ポワロ】ファイナルシーズンの3話目は「死者のあやまち」(Dead Man's Folly)です。これはなかなか面白かったです。登場人物が多いのもこの名探偵ポワロの特徴だと思うのですけど、それがまたきちんと活かされていたのも何よりでした
。以下簡単なあらすじとネタバレです
。
今回ポワロはまたしても友人のマダム・オリヴィエに呼び出されて、チューダー時代から続いているという豪邸=「ナスハウス」にやってきました。何でもそこで今度祭りが開かれるとかで、その余興に「殺人推理ゲーム」が行われるそうなのです
。その脚本を書いたのが、作家のマダム・オリヴィエです
。
ポワロは賞品プレゼンターとして呼ばれたというのが建前でしたが、マダム・オリヴィエは、
もしかしたら実際に殺人が行われるような嫌な予感
がすると言います。そしてこの第六感は見事に当たっておりました。何とこのナスハウス及びその周辺で、計3人もの人間が殺されてしまったのです。
まず1人目は、マダム・オリヴィエがその脚本の中で「遺体」の役を演じるよう命じたマーリーン・タッカー。まだ14歳だったこの少女は、ボート小屋で誰かの足音を聞いたら死んだふりをするという想定だったのが、床に横たわったマーリーンが2度と目覚めることはありませんでした。
またこれ以前に、このナスハウスの所有者であるジョージ・スタッブスの妻=ハティが行方不明になっています。パーティの間中このハティを捜しまわっていたジョージは当然、マーリーン殺害の容疑者から外されています。
このハティには、血のつながらない後見人のエイミー・フォリアットがおりました。このエイミーこそ、ナスハウスの本来の所有者だったのが、夫に続き、ふたりの息子、ヘンリーとジェームズも失った後は破産してしまったそうで、その頃、知的障害者で同じく家が破産した孤児のハティを引き取り、パリに移り住んだのだそうです。
そしてハティはジョージ・スタッブスと結婚~ジョージの財力でナスハウスを買い戻したハティは、ジョージの了解を得て後見人のエイミーを番小屋に住まわせていたのだそうです。あんなに優しい子はいないわ。
が、そのエイミーの言葉に反して、ハティの行動はとても「優しい子」には見えません。最初にポワロを眺めていた目つきは、まるで商売女のようでしたし、使用人のミス・ブルイスからもまったく信用されていません
。彼女曰く、ハティは知能が足りなくなどない、何もかも承知の上でやっているずる賢い女なのだそうです
。
またここに、ハティの従兄弟だというエティエンヌ・ド・スーザが現れます。ハティはこの従兄弟をひどく恐れ、あいつは人殺しだと騒いでいたことから、ここでハティはこのド・スーザに殺されたのではないかという疑惑が浮上します。
今回これを調査したのが、これまたポワロの知人だったブランド刑事です。このブランドが早速ド・スーザを調べると、その上着のポケットからハティのエメラルドの指輪が発見されました。死体は川に流したに違いない!
どうやらかなり気が短いらしいブランドは、早速ド・スーザを逮捕してしまいました。
その後、昔からナスハウスをよく知るらしい近所の船頭(漁師?)のジョン・マーデルが船から落ちて死亡します。酔っぱらっての事故だということですが、船のプロが船から落ちるとは思えません。
そして、ハティの遺体が見つからぬまま、ついにド・スーザが起訴されて裁判を間近に控えた頃、ようやくポワロの灰色の脳細胞が活性化いたしました。以下ネタバレです
。
確かにハティは殺されておりましたが、その犯人はド・スーザではなく、なんと夫のジョージでした。そしてそのジョージこそ、エイミーが周囲に
「飛行機の操縦ミスで墜落して死んだ」
と思わせていた、次男のジェームズだったのです。エイミーはハティの家は破産したと語っていましたが、それが真っ赤な嘘で、実はとても裕福だったそうなのです
。でもここ、自分が倒産したというのに、同じ境遇の子どもを引き取るというのは妙な話でしたよね
。
エイミーはハティの知能が低いのを利用して、息子のジェームズが化けたジョージ・スタッブスに嫁がせ、先祖代々受け継がれてきたナスハウスをまんまと手に入れたのです。でもこれだけなら、たとえ「嘘」はあったとしても、それなりに家族3人、幸福に暮らせるはずでした。
が、ジョージ、もとい、ジェームズには既に犯罪組織に属していたイタリア女の妻がいたため、この女がジェームズを追いかけて来たそうなのです。それでハティが邪魔になったジェームズはハティを殺し、こともあろうにこのイタリア女をハティとして家に引き込んでしまいました
。
このイタリア女が、ポワロがナスハウスにやってきた時、図々しくタクシーに相乗りしてきた女性=助手席に座った女でした。そう言えば「グラツィエ(grazie)
」と言ってましたっけ。この女は、人の善い(たぶん)ユーゴスラヴィア人女性を抱き込んで、いかにも連れのように装い、ユースホステルとナスハウスを行ったり来たりして、
「行方不明になる機会」
を伺っていたそうなのです。そして、3週間前に手紙を出して自分の到着を知らせてきていたド・スーザをまんまと殺人犯に仕立て上げ、遺体は見つからぬともハティが亡くなったと周囲に信じ込ませて、後々ジェームズと合流するつもりだったそう。
マダム・オリヴィエが、その脚本の中で、被害者を「ユーゴスラヴィア人」に描いたのは、この辺から来たインスピレーションだったそうです。ポワロもまたこれからひらめきを得たというのが楽しかったですね
。
ジョン・マーデルとマーリーンは、実の祖父と孫だったそうで、スタッブス夫妻の秘密を知ったジョンがマーリーンにこれを教え、マーリーンがジョージことジェームズを脅したことで、二人は殺されてしまったようです。
こうして親子で共謀して3人を殺し、由緒正しき名家の名誉を汚したエイミーは、ポワロに「ほんの少しの時間」をもらい、息子とともに自害して果てました。ブランドたちはこの結果に慌てふためいておりましたが、ポワロはちょっと悲しげに、でも実に冷静にこうつぶやくのみでした
:
Bon.(良し)
また他に謎解きの鍵として挙げられたのは、ポワロが執事にいつから働いているのかと尋ねたこと(1年弱~皆ハティの顔をよく知らないらしい)、ミス・ブルイスがハティに命じられてマーリーンにおやつを届けたと言っていたけど、ハティがそんな心配りのできるような女性にはまったく見えなかったこと、いつも大きな帽子をかぶっていたこと、エイミーが(今の)ハティを快く思っていなかったらしいこと、などでしょうか。
事件以外では、パーティの最中にマイケル・ウェイマンと逢引をしていた招待客のサリー・レッグがイヤリングを落としたことに気づいて捜しに来た時のポワロのセリフが面白かった:
Poirot is not a husband, alas, but he knows that they can be jealous.
ポワロは夫になったことはないけど、彼らが嫉妬深いことは理解できる
サリーが本当は夫のアレックとやり直したがっていたことを聞いたポワロが、二人が駆け落ちしたと傷心のうちにナスハウスを去ろうとしたアレックをけしかけたのも楽しかったです。
What you should do is to find Madame Sally immediately. Ask her to forgive you and beg her to come back.
あなたがすべきことは奥さんをすぐに追いかけて戻ってきてほしいと謝罪すること
名探偵ポワロの次回は「ヘラクレスの難業」 だそうで、これまた面白くなりそうで楽しみでございますね。
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