昭和元禄落語心中 あらすじと感想 第9話 秘密
岡田将生さん主演のドラマ、【昭和元禄落語心中】の9話は「秘密」です。その「秘密」は明かされたのではなく、秘密の存在が明らかになっただけで、内容は来週へ持ち越しのようです。
今回はまた情緒たっぷりの印象的なエピソードでございましたね。以下ネタバレのあらすじです
。
八雲は古希を迎えたらしく、その芸はますます枯れて深みを帯びてきた一方、誰にも言えない悩みを抱えてもいました。どうやら落語の途中で噺を忘れてしまうらしいのです
。
まだ八雲が真打だった頃、七代目が八雲に同じ悩みを語って聞かせたことがあったそうです。肝心なところで噺が飛んじまったら、思い出せなかったらと思うと怖くて仕方がねえ。
この怖さとの闘いに疲れ果てた七代目は、何度も、八雲に八代目を譲って引退したいと考えていたそうです。
噺家は年を取ってからが花だって。そんな恐れに負けないで下さいよ。まだまだ落語を枯れるまでやっていくのが今いる者、生きてる者の務めってやつじゃねえんですか?
その頃は、同じ恐怖が自分を襲うなんてことは夢にも思わなかった八雲は、今になってこの自分の発した言葉に苛まれているそうです。師匠、あん時のアタシの言葉が、今のアタシに突き刺さりますよ。
与太郎と小夏、そして小夏の息子の信之助(助六の助まで入れたのでしょうか)とともに七代目の墓参りに来ていた八雲は、七代目にそう語って聞かせていました
。
一方で、今が伸び盛りの与太郎は押しも押されもせぬ堂々たる真打として人気を博しています。また小夏も「下座」として三味線を弾くことになったそうです。
良い意味でも悪い意味でも自分のことに精一杯な年ごろのふたりは八雲の変化に気づきませんでしたが、長年仕えてきた松田だけは、八雲の悩みに気づきました。自宅で「品川心中」を練習していた八雲の噺が、途中でプツリと途切れてしまったからです
。
それには気づかぬふりをした松田でしたが、実際の寄席では、八雲の噺が同じところで止まるのではないかと冷や冷やしていたようです。
その寄席には、テレビの仕事を辞めて落語に戻ってきた萬月も出ていました。彼は「昭和の落語を記録に残していく仕事」も始めたそうで、早速、かつて助六と八雲が行った四国の亀屋旅館やみよ吉についても耳に入ってきたそうです。いよいよ「秘密」に近づいてきます。
萬月から資料集めを頼まれた松田は早速昔の写真を探し始めたところ、アルバムの中の1枚が剥がされていることに気づきました。その写真は、助六と八雲が一緒に演じた「弁天小僧」(#3迷路)の写真だったらしく、以前小夏が八雲に腹を立てて剥がし、半分に切ってしまったのです。
でも小夏は半分に切っては見たものの、結局は八雲の写真も捨てられずに取っておいたらしく、これでしょ、と持ってきてくれました。
松田は、養子とはいえ親子、生みの親より育ての親だから本当に嫌えるわけがないと感慨深そうでしたが、小夏は好きとか嫌いとかはもう乗り越えた、と言いながら、生みの親が死んだあの夜のことは、どうにも腑に落ちないのだと打ち明けます。
小夏はあの夜のことをずっと思い出せずにいたらしいのですが、寄席で三味線を弾くようになって、時々「ふわっと」思い出すことがあるのだそうです。
どうも あの人から聞いた話とは違うような気がする。
その「あの人=八雲」は与太郎や信之助と風呂に入った後、いせいよく野ざらしの一節を口にした信之助に(寿限無だけじゃなく)野ざらしもできるのかと尋ねました。今言った部分しか知らないと答えた信之助は「じいじ」はやったことがあるのかと聞き返します。
お前のおじい様と二人で やったこともあったねえ。けどもう二度とやらない。
どうやら信之助は本当の祖父について何も聞かされてなかったようです。驚く信之助に八雲は助六のレコードを差し出しました。会いたくてももういないんだ。死んじゃって。
そう語った八雲に、今度は与太郎が独演会の話を持ちかけました。最近八雲はほとんど独演会をしていなかったのだそうです。
独演会は面倒だ、死ぬなら落語をしながらコロッと逝きたいと語る八雲に、与太郎と信之助は口を揃えて、ずっと元気で落語をやってもらわなくちゃ、と励ましました。じいじの落語、も~っと聞きたい!
八雲はこの声に押され、ついに重い腰を上げました。じゃあ与太とふたりで親子会にしよう
。
その与太郎はどうやら出席できなかったらしい信之助の入学式にかこつけて、親子3人水入らずの写真を撮ることにしました。小夏が、与太郎が紋付で自分だけスーツと言ういでたちに文句を言うと、与太郎は、小夏こそ着物を着てくればよかったのに、とやり返します。
ふたりのやり取りを聞いていた写真屋は、貸衣装ならあると教えてくれました。そこに「白無垢」があるのを見た与太郎が、結婚式の写真を撮っておけばよかった、と悔しがると、小夏が着てあげよっか、と言い出します。もちろん与太は大喜びです
。
小夏がその白無垢を着終えたところに、なんとなんとみよ吉の幽霊が現れました。小夏が言うには、これまでも何度も出てきていたらしい
。
どうしたいの?何がしたいの?母親らしいことなんか何一つしてくれなかったくせに。いつまで私を縛りつけるの?
時を同じくして、取り壊しが決まったらしい寄席で昔を懐かしんでいた八雲の前には助六の幽霊が現れています。落語を聞きに来たのかい?それともやりに来たのかい?
一方、白無垢姿に身を包んだ小夏に感動した与太郎はシャッターチャンスに思わず横を向いて涙を止めようとしました。ダメダメ与太ちゃん、もう1枚!
親子会で八雲は「たちきり」という落語を披露することになりました。引き裂かれた男女の恋物語を語る「たちきり」では、終盤に三味線が入るらしく、それには小夏が抜擢されたようです。それで小夏は八雲にその曲、「黒髪」の稽古をつけてもらいました。
稽古が終わると、小夏は再びあの夜のことを切り出します。三味線を弾くたびに思い出しそうになる。
また小夏は、ずっとみよ吉に嫌われて育ち、自分もまたそんなみよ吉が嫌いだったのに、そんな自分が母親になれるのかとずっと不安だったと打ち明けました。
八雲は「あの日」については何も言わず、ただ小夏の思い込みは間違っているとだけ指摘します。いつか話してやるよ。
そのいつかがついにやってきました。
親子会での「たちきり」で、小夏は抜群のタイミングで黒髪を弾き始めました。恋人の小糸に死なれた若旦那が彼女を思っていた時に、死んだ小糸が奏でる「黒髪」が聞こえてくるというシーンです
。
~ご存知の方も多いでしょうが、黒髪は実に艶っぽい地唄です。「黒髪のむすぼれたる思ひをば 解けて寝た夜の枕こそ ひとり寝る夜の仇枕~」とご参考までに
~
若旦那が小糸に対して語る台詞は、まさに、かつての八雲がみよ吉に対して思った言葉そのものです。
小糸、自分の命を詰めてまであたしを想ってくれてありがとう。あたしは生涯妻と名のつく者は持たないから、それで許しておくれよ。
客席にみよ吉の幽霊が現れました。八雲が気づくと同時に小夏にもその姿が見えたようです。あの人にも見えてんの?
その後みよ吉は舞台に上がって八雲に後ろからピッタリ抱き着きました。すると八雲は心臓に痛みを覚えたらしく、ウっとうなり声を上げましたが、胸を抑えながら何とか最後まで語り終えたところでバタリと倒れ込んでしまいます
。
舞台袖でその様子を見ていた与太郎は、八雲が倒れる姿を客に見せてはならないと、すぐに幕を下ろしました。倒れ込んだ八雲に皆が駆けつけてきて病院に運ぶ話になっても、与太郎だけはここに残って落語をする、と言い切ります。それは八雲が苦しい息の下でそう与太郎に目で訴えていたからです
。
終わったらすぐ行く。 師匠のこと頼む。
以前七代目が倒れた時も、八雲が同じことをしましたっけ。
病院で目覚めた八雲は、心配そうに付き添っていた小夏に「あの日のことを何も言わずに死んじまったら怒るかい?」と尋ねました。小夏はそんなことはもうどうでもいい、生きて!と語りかけます。死ぬんじゃないよ!!
松田が糊で貼ってくれた弁天小僧の写真のその切ったところを撫でていた小夏の姿が浮かびました。
未練だねえ。まだ生きてらあ。
そう語った八雲の回想によると、どうやらあの夜みよ吉は助六を包丁で刺してしまった様でしたね。
来週は、与太郎と小夏が亀屋旅館での助六の落語のフィルムを目にするようです。それが小夏の記憶を呼び戻すことになるのでしょうか。
あ~泣いても笑っても来週が最終回です。
これまでに視聴した日本のドラマの視聴リストはこちらです
: 視聴ドラマ一覧~日本ドラマ編