【パラサイト~半地下の家族】を視聴しました(ネタバレと感想)
昨年話題になったポン・ジュノ監督の【パラサイト~半地下の家族】がテレビで放送されました。骨太な社会派の作品を想像していたので、途中はそのコミカルな内容に苦笑しきりでしたが、最後はガツーンとやられましたね
。ポン・ジュノ監督の作品を見るのはこれが初めてですけれど、こうした「深刻な内容をユーモアで包み込む」やりかたは韓国ドラマでもよく見られる手法ですよね
。実に面白かったです
。
以下、簡単なネタバレと感想です。
キム一家
キム家の4人は、いわゆる「半地下」と呼ばれる部屋に住んでいました。ほとんど日も差し込まないかび臭いその部屋にはWiFiの電波もなかなか届きません。家の中で一番高い場所は「トイレ」で、そこによじ登るとなんとかWiFiが使えました。4人とも職がないため、家で内職をする毎日です
。
ある日のこと、長男のギウ(チェ・ウシク~ト・チサン@屋根部屋のプリンス)に、友人のミニョク(パク・ソジュン)から家庭教師の仕事が舞い込みました。ミニョクが家庭教師をしている生徒=パク・ダヘ(チョン・ジソ)を、留学するミニョクの代わりに教えてほしいというのです。なんでもミニョクはダヘを本気で愛しているそうで、留学する間他の男に取られぬよう、信頼のおけるギウに頼みたいらしい。
とはいうものの、ギウは浪人中でした。ソウル大を目指してはいますが、そんなギウをパク家が認めてくれるかどうか心配です。でもミニョクは太鼓判を押しました。俺の推薦なら大丈夫だ。
ギウは、美大を目指している妹のギジョン(パク・ソダム)に、必要書類をすべて偽造させました。
パラサイト作戦
ミニョクの言う通り、パク家の女主人=ヨンギョ(チョ・ヨジョン~ソ・ウンジュ@凍てついた愛)は実にシンプル(=単純)でした。娘のダヘも、ミニョクの話とはだいぶ異なり、すぐにギウが好きになります
。ギウは即座に採用されると、皆から「ケビン先生」と呼ばれるようになりました。
そのギウは、ダヘの弟のダソン(チョン・ヒョンジュン)に美術の才能があると聞くと、早速ギジョンを売り込みます。知り合いに良い人物がいると言って、ギジョンを「ジェシカ」と名乗らせて連れてきました。ギジョンもまた言葉巧みにヨンギョを騙します
。
そのギジョンがダソンを教えて帰ろうとすると、パク家の主人でIT企業社長のパク・ドンイク(イ・ソンギュン~チェ・ヒョヌク@パスタ)が、女性を一人で帰らせるのは危険だと言って、自分の運転手にギジョンを送るよう命じました。
若い運転手は、さかんにギジョンを家まで送ると申し出ますが、ギジョンはキッパリ断った上、ある策略を巡らします。なんとこっそり下着を脱いで、座席の下に押し込んできたのです
。あたかも若い運転手が恋人とナニしたと思わせるように
。目的は父のギテク(ソン・ガンホ)を「ベンツ」の運転手にするためです
。
ドンイクはまんまと引っかかりました。若い運転手は解雇され、代わりにギジョンが「親戚の運転手」としてギテクを紹介します。こうしてギテクはパク家の運転手として雇われました。
最後は「家政婦」です。家事の苦手なヨンギョは、自分達が入居する前から邸にいる家政婦のムングァン(イ・ジョンウン~イ・ウンミ@知ってるワイフ)に頼りきりでした。ダヘからムングァンの桃アレルギーを聞いたギウは、早速これを利用します。ギウに桃の毛を振りかけられたムングァンがひどい咳をして病院に行ったところを、ギテクが写真に納めました。そしてこともあろうにムングァンは結核だとヨンギョに吹き込みます
。
これでムングァンも解雇され、キム家のラストバッター、チュンスク(チャン・ヘジン)が家政婦として乗り込んできました。
こうしてキム家のパラサイト(寄生)が完了します。パク家では、ダソンを除き、誰もこの事実に気づきませんでした。唯一ダソンだけは「ギテクとチュンスクは同じにおいがする」と指摘します。シャンプーや石鹸のそれではなく「地下」に住む人間(=貧しさ)のにおいだそうです。
誤算
ところが後日、パク一家の留守を狙ってこのムングァンがやってきました。ちょうどキム一家もパク邸でくつろいでいたところでしたが、このムングァンが思いもよらぬ事実を明かします。なんとムングァンは、夫のグンセをパク邸の地下に隠して養っていたのです。どうやら借金取りから逃げていたようですね。それで大食い(二人分食べる)だったのですね。
ムングァンはチュンスクに、どうか自分に代わってグンセに食事を与えてほしいと頼みました。チュンスクはにべもなく断りますが、近くで様子を伺っていたギテクたちが見つかって、4人が家族だと知られてしまいます。当然ムングァンは見逃しませんでした
。
逆に脅されたギテクたちは、なんとかムングァンとグンセを捕まえて監禁します。
そこへパク一家が戻ってきます。ギテクたちは慌てて隠れましたが、そこでドンイクが象徴的な一言を発しました。ギテクは「地下のにおい」がするというのです。裕福なドンイクやヨンギョは「地下」というと「地下鉄」しか思い浮かばなかったようですが、その地下鉄さえ、滅多に乗らないのですよね
。
大どんでん返し
パク家では、ダソンの誕生パーティーを開くことになりました。その頃キム一家の半地下がある街は水害に遭って家もほとんど水浸しでしたが、なんとか3人でやってきます。ギテクはヨンギョを乗せて買い物に行くのだけれど、何せ避難先の体育館からなんとか服を見繕ってやってきたため、ヨンギョもその「におい」に気づきました。ヨンギョが眉をひそめて窓を開けたことにギテクも気づきます
。
一方のチュンスクは、地下のふたりが気になって様子を見に行こうとしましたが、どうやらその頃ムングァンは既に亡くなっていたようですね。グンセはキム家に復讐を誓い、事態を収拾しようとやってきたギウを殴り、刃物を手にパーティーに乱入しました
。そこでギジョンが刺されます。
次に狙われたチュンスクは、なんとか串焼きの串で応戦したところに、気絶したダソンを病院へ連れて行こうとしたドンイクがやってきて、倒れこんだグンセの「におい」に顔をしかめて後ずさりしました。
その様子を見たギテクは我慢できず、ドンイクを刺し殺してしまいます。
エピローグ
ギテクは、本能的に「地下」へと逃げ込みました。陰惨な事件が起きたパク邸は、韓国人ではなくドイツ人に売られたそうで、ギテクは、24時間家にいる家政婦に見つからぬよう、時々食料を取りに上がってくるそうです。
ギジョンは亡くなりましたが、グンセに殴られて大けがをしたギウは何とか回復し、チュンスクとともに正当防衛が認められたのか、執行猶予となりました。グンセも亡くなったのでその正体は分からずじまい、またムングァンの遺体はギテクができる限りの手を尽くして弔ったそうです。
そのギウは、山からかつてのパク邸を見下ろしていて、ギテクからのモールス信号による手紙に気づきました。ギウは必ずこの邸を買って父を助け出すと心に誓います。
感想
ギテクはギウに「無計画な計画は最強だ」と教えていましたが、もはやその行き当たりばったりでは収集が付かなくなっているというラストですよね。それに対して息子のギウは「計画を立てて邸を買う」と誓っていました。韓国の格差社会も、もはや野放しではどうにもならないという象徴でしょうか。
冒頭でも触れましたが、韓国の深刻な格差社会をユーモアたっぷりに描き、終盤にはそれがシャレや冗談では済まないのだという強烈なメッセージを送ってくれた展開は見事でしたね。実に見ごたえがあって面白かったです
。